予選リーグ

(第8組)

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八月四日(土)

肯定:女子聖学院 VS否定:セントヨゼフ女子学園 3ー0(11ー8)で勝利!

女の戦い 試合前、生徒達は非常にびびっていた(らしい)。「ヨゼフは強い」「いや大したことはない」という情報が飛び交っていたためだ。初戦から東海地区代表との対戦というのも、けっこうなプレッシャーになっていた。
 試合開始の30分以上前に会場に行ってしまったというのも、そんな緊張感故だったかもしれない。ヨゼフの方も早々とやってきていた。とにかく賑やか。いかにも場慣れしているという感じだ。そういえば、去年JDA大会でジャッジをした、見覚えのある子もいる。ということは、彼女達は高校3年生だろうか。
 ジャッジは主審に九州支部長の佐長さんだった。
 試合開始。メリットは1つ。「公共事業の健全化」。大会二日前に作ったメリットだった。もう一つ、「多様な地域社会の実現」というのがあったが、ちょっと自信がなかった。というのも、こちらのメリットの方が試合にはかけていたのだけれど、あまり勝率が良くなかったからだ。関東大会の準決勝でも、学大に負けていた。
 そんなことがあって、一日にリンクマップから作り直し、システムとしてメリットが発生するこちらの方が勝ちやすいだろうということで決定した。
 それともう一つ、哲学として「人民の人民による、人民のための政治」を打ち出せるということがこのメリットの強みかなという僕の判断もあった。

 セントヨゼフのデメリットは、「行政サービスの低下」だった。
 実は試合前の準備のとき、ヨゼフの大きな声での打ち合わせを聞いていて、ちょっと嫌な予感がした。それは立論者に対し、「こことここを読めばいいよ」といった指示が出ていたことだった。
 (証拠資料を飛ばし読みしてくると嫌だな…)そう考えていた。
 理由は7月27日に遡る。女子聖学院を会場にして練習試合を行った。そのとき、肯定側学芸大附属、否定側創価の試合のジャッジをしていた。
 創価がこの時、「サービス切り下げ競争」というデメリットを出してきた。その根拠となる資料にちょっと引っ掛かった。東大教授の神野さんの著書からだったのだけど、ナショナルミニマムなどに対する手当てを行わなかった場合は、という前提が入った長い資料だった。東海地区で出ていた議論を、リサーチして自分達のデメリットに加えてきたものだった。試合後のコメントでは、この資料では前提条件が示されているので、肯定側が格差是正やナショナルミニマムに対する手当てをするというプランを出してくれば、この議論はとれないよ、とコメントしていた。
 うちのチームでも、この議論が出されてきた場合には、前提の部分を質疑で確認し、その上でプランの3点目で手当てをするから起こらないと言えばいいね、と相談していた。
 ただ、神野さんの資料が非常に長いので、中略された時には質疑で確認し、さらに資料を見せてもらってアピールする必要があるかな、なんて話をしていた。
 で、東海地区のセントヨゼフである。果たしてサービス切り下げ競争が出てきた。しかも、資料を「中略」で飛ばし読みしてきた。で、ちょっと興奮の余り、ルール違反をぼくは犯してしまった。
 つい、指差して確認することを指示してしまったのである。
 これには、ヨゼフの先生から「後ろから指示を出さないで下さい」というお叱りの言葉を頂戴した。まったくもってその通り。試合後にも大会本部から注意をいただいた。

 生徒に任せておくべきだった。もし、クレームをつける必要があれば、試合後にするべきだった。ただ、あってほしくない事態が起こってしまったために、前後の見境なく、指示をだしてしまった。

 証拠資料の引用は難しい。ここは本当に指導者が目を光らせないといけない。資料のつもり
 「積極的安楽死」が論題だった時、ジャッジをした関東の練習試合で、一冊の本の、都合のいい部分だけを文末を省略して引用していた学校があった。コメントの際、省略された部分を読むと、逆の立場になることを確認して厳しく注意したことがあった。
 今年度も、自分達の議論をサポートしてくれる資料を見つけたと思って、読んでいる学校があって、その次のページに、実はその反対のことが書かれている部分があることを指摘したことがあった。
 実はこの試合の直前まで、関東のある学校と、引用している部分の解釈が逆になるかもしれないというので、原文の検討をしていた所だった。
 ちなみに試合後に原文を添えて大会本部にこのことは報告した。去年の高校の決勝戦でも注意を喚起したけれど、こうしたことは今後あってほしくないし、なくすように研究会などでも取り組んでいきたいと思う。

 で、うちの生徒達だが、ぼくが指示するまでもなく、質疑で確認をし、その後の準備時間中に資料の提出を要求して、省略された部分に大事なことが書かれていたことを確認し、第一反駁で「不適切な引用だ」とアピールした。

 ヨゼフの人たちはその反駁を聞いて首をかしげていたので、たぶん、故意ではなかったのだろう。

 ヨゼフの発生過程はサービス切り下げ競争の他に、規模が大きくなって目が粗くなるというのと、州都一極集中というのを出してきていた。しかし、後の二つは証明不足で、それほど決定的とはならないようなものだった。サービス切り下げ競争さえつぶせれば、かなりの確率で勝てそうだった。

 否定側第一反駁がそれほど厚い攻撃を仕掛けて来なかったことにも助けられて、結果は3ー0での勝利になった。

 しかし、急造メリットの欠陥もあらわになった。
 まず、引用が長いこと。そして一冊の本からだけ引用していること。
 時間がなかったいえばそれまでだが、その点はかなり厳しく指摘された。そしてこれがこの後の戦いでも大きな負担になっていった。

 勝利が決まった後、反駁を担当した高2二人は、安堵から泣いていた。それだけ緊張感が強かったということの証でもあったと思う。

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筑田 周一
s_chikuda@hotmail.com
最終更新日: 01.8.17