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女子聖学院ディベート部 |
実はこの試合で僕は戦略的に大きなミスをした。 前日の試合で、青雲高校がプランに不思議なことを入れているということをつかんでいた。それは、道州制を導入する前に何年かかけて全国のインフラ整備をするというものだった。ところがデメリットとして「効率的な行政サービス」をあげている。そして現状分析で今の行政は縦割りで無駄が多い、ということを言ってしまっている。 ということは、道州制実施の前にインフラ整備をすれば、時間も区切られているし、それこそ地方が競って陳情合戦をして、多大な無駄が発生することになる。 ということは「効率的な行政サービス」というより、「無駄な公共事業」を増やすだけじゃないのだろうか。 幸い、「無駄な公共事業が増える」というのは創価がデメリットとして出してきていた。 なので、この資料をつかって、このメリットをつぶそう、ということになった。 ところが、ここで、コーチとしては二つの選択肢があった。 1つはデメリットとして「無駄な公共事業が増える」というのを出すという選択肢。 相手の議論に沿っているから、一番オーソドックスな方法だろう。 2つめはデメリットは別のものを出して、なんとかメリット2をターンしてデメリットにするためにこの資料を使う方法。 決まればデメリットが3つになるので、非常に優位に立てる。 デメリットとして出すことも考えた。しかし、立論者に今から新しいデメリットを頭に入れろというのはちょっと酷な気がした。それよりなにより、ターンできた時の魅力にひかれて、大きな落とし穴に気づかなかった。 そして試合。 青雲高校のプランの5点目は、2030年までにインフラを整備し、それから道州制を実施するというものだった。こちらが10年くらいかなと予想していたより、20年も長く現状のままインフラ整備をしてくれる。これはチャンスだ!とフローを取りながら思っていた。 メリット1は「東京一極集中の是正」メリット2は「効率的な行政サービス」だった。 メリット1に関しては、質疑の段階で、何がどう是正されるのかが分かっていないことが判明してしまったため、メリット2をデメリットに返すことができるかが勝負だった。 否定1反は準備した通り、現状でまず公共事業が削減される方向にあり、効率的なサービスは行われるようになることを反駁し、その後で現状では抑えているのに、プランの5で公共事業を大いに行う方向に言ってしまうので、かえって無駄な事業が増えることを反駁していった。 ところが、主審の方が、こちらの議論を聞きながら、しきりに頭をひねっている。 そして肯定側第一反駁。聞いていて、冷や汗が出た。昨日、金津戦でジャッジに指摘された部分を適確についてくる。特に市町村の事務が形骸化するという主張をサポートする資料の内容に踏み込んで、悪化するとは述べていないと批判してきた部分、広域化により目が粗くなるという主張をサポートする資料の「形骸化する恐れがある」といっているだけで、メリット2から効率化するよう努力するようになるから起こらないと反駁してきた所は非常に痛い所をつかれた。 ただ、デメリット2に関しては、質疑では非常に鋭い質問をされたのだが、反駁では時間がなくてあまり有効な切り崩しはなかった。 否定側第2反駁はふただび野寺君が降臨して上手に論点をまとめ直し、ボーティングイシューをアピールできた。 しかし、相手の2反でデメリット1はかなり小さくされてしまった。 勝負はメリット2とデメリット2の大きさ比べに持ち込まれた感じだった。 それでも、メリット2はかなり小さくできたと思うが…。 講評を待つ間に、今年は人数が揃わなくて関東大会に出らず、見学に来ていたある先生がそっと近づいてきた。大学時代ESSで活躍していた方だ。 「先生、否定側の1反の議論ですが、あれはジャッジによっては新出議論ということでとってもらえない可能性がありますよ…」 そう言われるまでうかつにも気がつかなかった。確かにそうだ。こちらの反駁が相手の発生過程に上手くリンクしていない。当初予定していた相手の議論を引っ張るのを忘れてしまっていたのだ。やはり素直にデメリットとすべきだったか。 やばい。もしかすると、メリット1が丸まる残っているかもしれない。ジャッジが首をかしげていたのは、これだったのだ。 生徒に近づくとすでに泣いていた。「うまくできなかった」というのが理由だった。 「すまん、君たちのせいじゃない、明らかに僕の戦略ミスだ」 そう話している間にジャッジが戻ってきて、講評、判定になった。やっぱり新出議論として取らなかった人がいたようだ。しかし、現状への批判と、デメリット2を評価して下さった人が二人いて、何とか勝つことができた。 しかし、喜びは湧いてこなかった。 青雲高校は強かった。実に爽やかで、クレバーな試合はこびが印象的だった。 これで8組1位で予選通過。7組の2位と対戦することになった。 |
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筑田 周一
s_chikuda@hotmail.com
最終更新日: 01.8.17