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ディベート部の歴史

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第八回ディベート甲子園ベスト16。

それは、部員たちのひた向きな努力と実力から見て、あまりに不当な結果としかいいようがなかった。
「もう、このチームの試合が観られないのか」悔しさと、虚脱感が交差する。
「私達の何がいけなかったんですか」泣きながら尋ねてくる選手へ、かける言葉はすぐには見つからなかった。
コミュニケーション点69点。地方大会、全国大会予選を通じて、64点が今までの最高点と聞いた。それをはるかに上回る得点をたたき出した。
内容も、完ぺきとしか言いようがなかった。非のつけ所のない完璧なチームワーク。
質疑から第一反駁へ、第一反駁から第二反駁へ、ボーティングイシューをハッキリと示して流れるような試合運び。
これで負けたら、もう運が悪かったとしか表現のしようがない。
相手は、同じ関東代表の下館第一だった。
彼女達の戦いぶりも、見事だった。練習試合で散々穴を指摘してきた立論で、あえて真っ向勝負を仕掛けてきた。
こちらのネガティブブロックに、論点を絞って最大限、かつ有効な反駁を返してきた肯定側第一反駁。最後の逆転にかけて、メリットの価値を最大限にアピールしようと熱弁を振るった第二反駁。
甲乙つけがたい名勝負だった。
これを決勝戦で見たかった。そんな試合内容だった。
しかし、勝利の女神は微笑んでくれなかった。2−1。
終わってしまった。
負けたという実感が、ない。
なのに、もう試合には出られない。この悔しさを、なんと表現したらいいのだろう。
決勝トーナメント用に、議論をさらに精選したメリットも出さないうちに終わってしまった。
解決性の弱さに悩み、全面書き直しか、このまま勝負か、そうみんなで話していたとき、ふとヨミダス文書館を検索して解決性を補強する資料を見つけた8月1日の喜び。修猷館対策を話していて、部屋から見た2日の夜の打ち上げ花火の美しさ。そして否定側第一反駁のスピーチの練習をしていて、気がついたらもう12時を過ぎていたことに気づいたときの驚き。
リハーサルとして、準決勝が終わり、創価と早稲田が決勝の抽選を行った後、決勝戦用にセッティングされた舞台の上で、小倉高校と肯定側で試合をしたが、もうあのモチベーションは戻ってこなかった。
幕張の海へ向かってみんなで「○○のばかやろー!」と叫んだ。
「うう、くやしい。」あまりの悔しさに、精神的苦痛が肉体的苦痛に転化して、頭痛が止まらなかった。

それでも、素晴らしかった試合の一つ一つを書き留めておこうと思う。

予選リーグ

 会場について予選リーグ表を見た。去年関東地区4位だった駿台甲府は、予選5組だったので、その辺かなと思っていたのだが、今年から九州地区の出場校が6に増えたことなどもあってかなり予想と違っていた。予選8組、修猷館高校、県立岡崎高校、県立新居浜東高校と一緒。おととしの決勝戦で負けた修猷館と予選で戦うことができる。去年、見学に来ていた部員達は、修猷館と南山国際の試合のビデオを見て、修猷館の試合に憧れていた。その憧れのチームと戦えることで、純粋に喜んでいた。

予選リーグ第一試合 肯定:女子聖学院- 否定:県立岡崎高校(3−0で勝利)

 この試合の始まる前にふと気がついて、今までの予選リーグの初戦の対戦相手を書き出してみた。
 第2回大会:東海高校。第3回大会:横須賀高校。第4回大会:桑名高校。第6回大会:セントヨゼフ女子学園高校。奇しくも全部東海地区。東海高校には負けたが、あとは全勝。ということで、実は東海地区代表校の足を引っ張っている存在だったのだった。

 さて、今年の県立岡崎高校。B論題の代表校ということだったが、よくトレーニングされたチームだった。
こちらのメリットは「緩和ケアの普及」と「死ぬ権利の保障」。予選ということで立論の解決性が論理的な説明のみというあまり強くないものを使おうと決めていた。すると相手はその弱点を的確に反駁してきた。
 メリット1の解決性の議論に対して、「麻薬に対する偏見は変わらない」「医者が1殺すのか、2方法を尽くすのか、どちらを選ぶかはあいまいだ」「現状で緩和ケアは普及している(緩和ケア教育が進んでいるという資料)つき」「モルヒネは使われる方向にある(がんセンターでの使用量増加の資料つき)と4点反駁してきた。
 メリット2には、2点の反駁があった。
 「呼吸困難は緩和可能(薬剤の資料つき)」「望んでいる人の資料は国民へのアンケートであって末期患者のものではない」というものだった。
 かなり丁寧な反駁だったので、肯定側第一反駁がかなり忙しくなることが予想された。

 相手のデメリットは「死の早期選択」。フローを見ると、「固有性甘いぞ、証明ないぞ、つつけ、つつけ」とメモが書いてある。ところが第一反駁が粗い。ポイントは抑えたが、それぞれを本当に「つついた」だけで、十分崩してはいなかった。これは相手の第一反駁で提出されたメリットへの再反駁を資料付きで反駁しようとしたため。おかげでメリットは守れた。相手の第二反駁があまり有効でなかったので、第二反駁でキレイにまとめることができた。
結果は3−0だったが、デメリットへの反駁の粗さから、一つ間違えると、逆になる危険性の高かった試合だった。

予選リーグ第二試合 肯定:新居浜東高校- 否定:女子聖学院(1−2で勝利)

 結果は票が割れたけれど、まあ圧勝と言っていい試合。
 メリット1「患者の生き方を選択する権利を守る」は立論時点で解決性がない。メリット2は「不必要な殺人の防止」で、深刻性が不明。そもそもこうした関東では淘汰されてしまって今期は全く出てこなくなったものが残っているのが試合慣れしていないという印象をうけた。
 しかし、逆に言うとあまり関東では見かけないメリットなので、返し方で混乱したみたいだった。ちょっと的外れに感じる反駁をしたので、そこを残っていると判断したジャッジがいたみたいだった。
ただ、肯定側に投票した理由が議論の内容に介入しすぎで、ちょっと生徒としては対応しようがないものだったので勘弁してほしいなあ、と感じた。
 でもまあ、本当はもっと簡単に勝てる試合だった。
 いくつか突くべきポイントを見落としていたので、あとでレクチャーしたが、逆に言うと、次の修猷館戦に向けては、こちらの手の内を隠すことにもなった。
 修猷館も2勝したため、この勝利で早々と決勝トーナメント進出を決めることができた。 

予選第三試合 肯定側:修猷館高校 - 否定側:女子聖学院高校 0−3で勝利!

 予選の組み合わせを見て、「よーし!」と気合いが入ったのは、僕だけではないだろう。一昨年の決勝戦。あの力を出し切れずに終わってしまった試合。あそこから女子聖の新たな歩みが始まった。
 あの時は修猷館高校に関しては失礼だけれど全くノーマークで、どんなデメリットを出してくるのかもよくわからずに対戦していた。何しろ全チームに偵察を送っている創価からフローシートを借りようと思ったら、寝ていて取ってなかったということで、非常に困ったのを覚えている。
 今回はそんなことはない。同じリーグだし、偵察に否定側第一反駁担当者と卒業生を派遣してあった。
 おまけに創価の卒業生も試合を見に行っていて、彼の意見も参考にすることができた。
 ということで、予選突破は決まったが、ぜひ1位で突破したいということで、2日の夜は修猷館対策にかかりきることになった。
 幕張プリンスの3034号室に集合して、取ってきたフローシートを研究する。
 報告を聞くと、プランがかなり作り込んでいることがわかった。ただ、プラン2点目で国公立病院から指定病院を選び、WHO方式も普及させるということが入っていた。
 ここで悩んだのが、WHO方式を普及させるというのが、全国の全ての病院なのかということと、メリットの「安らかな死」が、安楽死を選択した患者のことなのか、それ以外の患者全てにも起こることとして述べていることなのかということだった。
 もし、WHO方式を全ての病院に普及させ、かつ積極的安楽死を選んでいない患者にも安らかな死が迎えられるという話ならば、この部分は安楽死法制化と無関係に、WHO方式の普及から生じるメリットになり、論題外ということになる。
 フローを見るかぎりそんなことはないだろうとは思ったが、念のため、そういう場合も想定して準備をすることにした。
 準備を始めてしばらく経ったところで、窓の外で花火が上がった。マリンスタジアムの脇から打ち上げているのが、ちょうど真正面に見えた。しかも30階の部屋の高さだと目線の高さになるので、すごくキレイだった。しばらくみんなで見とれていた。まるで明日の勝利を祝ってくれているかのようだった。
 気分を新たにして準備を進める。
 指定病院というプランは新居浜東も出してきていた。実はこのプランはメリットをすごく小さくしてしまうため、関東では消えていったプランだった。だから新居浜東戦でも、この点を指摘すればもっと楽に勝てたはずだった。したがって明日の試合では質疑でここを聞いて、メリットは、まず指定病院に入ることができて、かつ希望をしていて、かつ全ての条件を満たした人だけに発生するものだということを確認しようということになった。こうすれば極限までメリットは小さくできる。(このところ国立病院がつぶれているなんて話もいれようかと思ったが、それは時間がかかるし、データもないのでやめにした。)
 それからメリットの分析を見ていくと、解決性で、ニーズがあるということで厚生省の調査から国民の10%が望んでいるというのを出してきていることがわかった。
 ここはうちのメリット2の現状分析でも述べている。しかしこれはあくまで健康な国民に対して行ったものだし、末期になって本当に望むということに関しては証明をしていない。したがって、その点と実は末期患者は望んでいないということを証拠資料突きで反駁しようと言うことにした。相手の立論の流れからすると、現状分析があってそのあと解決性でこのニーズの話が出てくるのだけれど、この点さえつぶせば、いくら深刻な現状があっても問題は解決しない。ということで、ここをまず反駁しようということにした。
 翌日の試合ではなぜかこのニーズの議論を最初に持ってきてくれたので、こちらとしては相手の議論の道筋にそって反駁ができることになって非常に助かったのだが。
 それにしてもフローを見ると、分析が緻密で非常に反駁しにくくなっている。
 通常の反駁をしようとするとどうしても時間がかかって議論を残してしまう。
 そこで質疑と連携してできるだけ論点を絞っていこうということになった。
 まずガンの痛みに関しては、WHO方式を普及させるという話をしているので、質疑でWHO方式によって90から95%の痛みは除去できるという話を引き出して、それに乗って残りの5%も除去可能という議論から反駁を始めようということになった。
 呼吸困難と全身倦怠感の話に関しては、肉体的苦痛がとれるのにそれだけで積極的安楽死を望むという証明がない、望んだとしてもそれは生きたいという気持ちの裏返しだという解決性への反駁と合わせようということになった。
 その他のがん以外の痛みに関しては、精神的なケアで安心感を与えれば積極的安楽死を選ばないという反駁を用意した。
 ここまで用意して、実際に4分間で話すことができるか、第一反駁担当者に作文するように指示を出した。
 考えてみると、第一反駁について、これほど細かく指示を出したのは初めてだった。
 あれは確か関東大会直前に早稲田を招いて行った練習試合でのことだった。
 今期、ほとんど女子聖の練習試合の様子を見ていなかったのだが、この日始めてまともに試合を見た。そして驚いた。
 反駁の量が半端じゃない。すんごいスピードでまくし立てる。
 今まで「もっと早くしゃべれ」と指導してもなかなか十分な反駁ができないことが多かった。それが、何も指導しないうちにこんなに沢山の論点をスピーチできるようになっている。そのことにすごく感動したのと同時に、すごく悩んだ。
 今期、コミュニケーションを高めるために様々な取り組みをしてきた。
 一顧問としては「よくここまでスピーチできるようになった!」と大いに褒めたい。しかし、連盟の常任理事の立場、関東支部の事務局長の立場からすると、「それはいくら何でも速すぎるだろう」ということになる。
 実際、練習試合でもコミュ点を2点しかもらえず落ち込んでいることが多かった。
 ある程度速くても、実はコミュ点をよくする方法はある。それは反駁内容をストーリー化してジャッジに聞きやすくすることだ。
 ただ単にサインポスティングをするだけでなく、たとえばこんなふうにストーリー化してみようとアドバイスした。
 「メリットの「安らかな死」ですが、まず確認したいのは、安らかに死ねるのは、指定病院に入って、安楽死を希望し、かつこの条件を全てクリアした人だけです。ではそのような人がいるのでしょうか。まずその点から見ていきましょう。ニーズがある、というところをご覧下さい。この点に関して3点反駁します。…」
 簡単にいうとこんな風な言い回しである。しかし、実際に自分の言葉でこれを書こうとしていくと、なかなか難しい。気がついたら12時になっていた。
 第一反駁担当者がそうした反駁を考えている間、第二反駁担当者とも話をした。
 今回の論題では第二反駁での比較の仕方が試合を左右することが多かった。今回あえて肯定側と否定側両方の第二反駁を一人に任せることにした。
 否定側第一反駁担当者と比べると、彼女は決して早口でしゃべるのが得意ではない。しかし、逆に口調に説得力がある。そして何より自分でいろいろと考えて準備を進めることができるのが長所だった。彼女とは、デメリットを予選用のものを使うか、決勝トーナメント用のものを使うかでまず話し合った。
 関東大会では、結局否定側では一勝もできなかった。しかし、その時のデメリットは非常にわかりやすく、固有性の部分をちょっと強化すれば十分全国でも使えるものになると感じていた。この点を強化した立論は、30日に江戸取と行った練習試合で使ってみて、ある程度の手ごたえを感じていた。翌日の早稲田との試合でもこれで勝てていたので自信を深めていた。
 しかし、1日になって、第二反駁担当者から、もう一つ予選用のデメリットがほしいという意見が出て、彼女は立論担当者と二人で四時過ぎまでかかって完成させた。
 決勝トーナメント用のものは、上手くはまるとほとんど崩されずに残る。しかし、関東大会では勘違いされて、小さくしたメリットと同程度かもっと小さくしか起こらないとされて負けていた。それに比べると、予選用の精神的苦痛は社会による圧力ということで、メリットを無関係に発生する。なので、こちらで行こうということになった。
 相手の修猷館の第二反駁は新田君。九州大会のベストディベーターだ。こちらの第二反駁できちんとした比較をして、こちらの優位性を印象づけておかないと最後に持っていかれてしまう。だから、彼女にも新居浜東戦でできなかった部分をかなり丁寧にこうしようという形で指示を出した。
 日付が変わって3日。いよいよ決戦の時が来た。
 相手の立論は、構成を多少入れ換えてきたが、昨日考えていたものとそれほど変わっていない。おまけにニーズの話を最初に持ってきてくれている。これなら反駁がしやすい。
 こちらの質疑になる。ところが、WHO方式のことを聞いてくれない。なんと第一反駁担当者と話をしていたときに席を外していて、その後肯定側の立論の手直しをしたりしていてきちんと意志疎通ができていなかった。大いに焦る。
 しかし、今回否定側質疑に入った部長は、物おじしない性格と明るいキャラクターでチームを引っ張ってきてくれていた。関東大会後にメンバーの入れ換えを行ったとき、第二反駁からの希望で彼女を否定側のチームにも入れることにした。第二反駁曰く、それまでは否定側チームは大人しいメンバーが集まったため、試合中の打ち合わせも余りできず、またネガティブな話をするために、なんだか暗くなるので、ムードメーカーがほしかったということだった。実際試合になっても、全然緊張しないと公言してはばからない彼女のキャラが、否定側の試合運びをガラッと変えてくれたのは事実。WHO方式以外のところはきちんと確認をしてくれていた。
 こうなると、準備していた反駁の何を使い、何を捨てるかを第一反駁が考えなくてはいけない。
 心配はしかし杞憂だった。WHO方式について資料付きで反駁をし、呼吸困難の部分は大胆にも捨てた。しかしそれで正解だった。解決性と一番大きく発生するガンの痛みの部分さえ小さくできれば、あとはそれほど主要な争点にはならない。
 こちらのデメリットは「精神的苦痛の増加」のままだった。ただし、相手のメリットと大きさを比較するため、100万人という年間の死亡者の数を入れたりした。それでも非常にゆっくりと書き取りやすいスピードだった。
 この否定側立論担当者は、去年クラスの授業で試合をしたときに、他の生徒達からもっとも信頼されていた生徒だった。実際練習試合でも非常に歯切れよく聴き取りやすい話し方をしていた。関東大会では、他の部員を成長させるためにあえてレギュラーから外れてもらったが、その苦しさによく耐えて、みんなのサポートに回ってくれていた。そしてこの試合ではそのわかりやすいスピーチで13点というコミュ点を稼いでくれた。
 さて、相手の第一反駁になった。こちらのネガティブブロックにどの程度切り返して、プレッシャーをかけてくるのか。メリットに関しては、基本的にこちらの反駁したところへ再反駁をするというスタンスだった。ただ、解決性で10%のニーズに対する信ぴょう性への反駁に対し、10%いるという反駁を返しただけだったり、デメリット2の希望は一過性だという資料を用いて反駁したところに、わからない、本意だと反駁したり、ちょっと粗さが目立った。まあそれはこちらのネガティブブロックがそれだけ強力だったことの裏返しなのだが。
 デメリットに関しては社会圧力に関してプランは末期患者が対象であるので他に圧力がかかるかを証明していない。
 オーストラリアの事例に関して日本と考え方が違い、7、8割が安楽死を認めているための圧力であり、日本では10%しか推奨していないので圧力はない。
 よき死の作法で法制化が積極的安楽死の肯定と受け取られるという議論には9割が安楽死を認めていないのだから社会風潮は変わるのか、という疑問が出された。
 発生過程2の医者による圧力に関しては、プランによって解決可能という反駁があった。
 証拠資料付きの反駁はガンの痛みの5%の部分についてだけだったので、かなり否定第二反駁は楽になった。
 そして第二反駁。セオリー通りデメリットに対する再反駁から入った。特に上手だったのはオーストラリアの事例の再評価。相手の反駁を上手に利用して自分たちの議論を強化することに成功していた。そしてデメリットの影響力の大きさとメリットの小ささを上手に比較して、国として行うべきではないというポイントを印象づけることに成功していた。
 最後、新田君のスピーチは流石に上手かった。いくつかのポイントでかなり返されかけたけれど、やはり焦っていたのかちょっと粗かった。
 結果は0−3での勝利。初めてコーチらしいことを生徒たちにしてあげての勝利だった。これで1位通過が決定。しかし、このことで下館第一と関東対決をする羽目になってしまった…。

決勝トーナメント

決勝トーナメント第一回戦 肯定:下館第一高校 - 否定:女子聖学院 2−1で敗戦

 

 4日のリハーサルが終わり、神田外語を出た当りで、この大会ずっと面倒を見てくれていた卒業生が「今日の敗戦なんですけど、私が原因かもしれません。」と言い出した。「実はビターチョコ買っちゃったんです。」

 女子聖学院ディベート部には、いくつかのジンクスがある。たとえば、第三回大会の時に、僕がチョコレートが食べたくてあちこち聞いて回ったのだけど、近所にコンビニがなくて手にはいらなかった。で、決勝トーナメント第一回戦で負けた。それ以来、必ずチョコを用意することにした。第五回大会の関東予選。いつもは明治のミルクチョコを買ってくるのに、たまたまミルクチョコがなくて、ビターチョコを買った。偶然に生徒達もみんなビターチョコを買っていた。そして初めての関東敗退。以来、ビターチョコは女子聖学院では絶対買ってはいけないものとしてタブーになっていた。

 そんな懐かしいタブーを引っ張り出してきて考えたくなるほど、部員達のパフォーマンスは今大会最高の出来だった。

 この試合の前、否定側になったことで、決勝トーナメント用の立論に切り替えるか、それとも予選で2勝している立論のままで行くかを相談した。本来ならすんなり決勝トーナメント用に切り替えるところだったが、そのまま予選の立論でいくことにした。理由は、決勝トーナメント用の立論は下館第一に知られているということだった。下館とは28日、31日と練習試合をしていた。31日に直接試合をしたわけではないが、こちらが試合をしているときに見ていたはずだった。逆に予選用の立論は、下館は偵察要員がいないので知られていない。

 ということで予選用の立論でいくことにした。

 問題は相手がどの立論で来るかだった。予選では新しい立論を出していたが、ジャッジに理解してもらえず負けていた。それを手直しするのか、それとも今まで練習試合で使ったものを持ってくるのか。僕は真正面からぶつかってくる、と予想した。ここまで来て、何か策を弄するような相手ではない。

 試合が始まると予想通り、練習試合で使っていた立論のままで勝負をしてきた。この立論の弱点は、解決性が示されていないこと。そのことは練習試合の時にも何度も指摘していた。だから予選では出さなかったのだし、彼女達も苦労したのだと思う。解決性の議論を補うかわりに、内因性の議論を増やしてきていた。

 それでも解決性が崩れてしまえばこのメリットは取られなくなってしまう。ここの攻防が勝敗を分けると言っても過言ではなかった。

 ただ、下館の面々は一騎当千のつわものと言ってよかった。たとえば、僕は多少立論が弱くても、相手が高校生だったら何とか勝ちに持ち込むことができると思う。それだけのスキルは身につけているつもりだ。彼女達もそうしたスキルと経験値を十分に持っている。何しろ質疑と第一反駁担当者は中学の時に全国3位になったときの下館南中のメンバー。特に第一反駁担当者はあの瀬能さんをして「ディベートマシーン」と呼ばしめた逸材だ。彼女は3位チームでありながら、ベストディベーターを獲得してもいる。

 また第二反駁担当者は秋季関東大会でベストディベーターを獲得している。

 したがって、ちょっとでもこちらがスキを見せれば、確実にそこをついて形勢を引っ繰返すだけの力を持っていた。

 ということで、試合はものすごくハイレベルな議論の応酬となった。

 こちらの否定側第一反駁は、修猷館との戦いで自信を深めたのか、素晴らしいスピーチを展開した。相手の提示したガンの痛みが解決可能であること、少なくとも死なせてほしいというレベルの痛みは残らないこと、そしてその技術が現在広く普及していること、さらに大学での教育によりさらに普及していくことを提示した。

 また解決性に関してもどれくらい望む人がいるのか、いたとして条件をクリアできるのかしたがっていたとしても非常に小さいメリットだということを反駁した。

 この反駁に関しては、一緒に見ていた早稲田の青木君とは「コミュ点を捨てて勝負に出たな」という話をしていた。とにかく今までで一番論点を示して強力なネガティブブロックを作ることに成功したので、多少のコミュ点の低下はやむを得ないかなと考えていた。しかし、上から順番に丁寧に反駁をしていったことで、ジャッジはうんうんうなずきながら書き取ってくれていた。結果として14点という非常に高い点数をいただくことになった。

 これは意外だったが、しかし、今後のコミュ点のつけ方について一つの示唆を与えてくれたと思う。つまり速ければ何でもダメだということではないということだ。

 たしかに今までで一番速いスピーチだったが、原稿を読み上げるだけのスピーチではなく、ジャッジに聞き取りやすいように気を配りながら、話していた。特に数字が沢山出てくる資料を読み上げていたが、速すぎて書き取れないということはなかったし、アイコンタクトも極力意識して伝えようという意志が伝わってくるスピーチだった。修猷館対策で昨夜特訓したことが大いに生きていると感じた。

 これに対する肯定側第一反駁。「ディベートマシーン」の面目躍如といったすごいスピーチだった。セオリー通り、デメリットへの反駁から入る。

 社会による圧力は残すと価値の比較で肯定側が不利になる。ここでは固有性の議論をして現状でも圧力があることを示し、現状との差がどの程度あるのか証明していないという反駁をしかけるのが定石だ。

 しかし実際には社会的弱者すべてといっても突然死は入らない、周りに依存している人がどのくらい他者に依存しているのか、圧力を感じるというが勝手に感じるだけだ、オーストラリアで圧力を受けたというが、一部とはどのくらいか?法を撤回したのは圧力ではなく、実施しようという医者がいなかったからだ。個人より集団の秩序を重んじてしまうというが、それも家族に対する愛情表現の一つだからいいではないか。医者による圧力というがどの程度圧力がかかるのか。プランの3のCで本人が希望する手段でもとれないときと言っているから他のホスピスでのケアなども熟知してそれを選べる。またインフォームドコンセントのガイドラインを作り、一体となって極力患者の意向に装用にするので、圧力は起きない。

 これだけの反駁をまず仕掛けてきた。

 そしてメリットの再構築に移っていった。

 内因性の議論では、痛みをとる技術があるという反駁に対してそれは正しく使った場合の話でどのくらい使われているかは使われていないという資料を1点目で述べたことで切り返した。さらに普及しているという反駁には非常に苦しいという反論を返した。しかし、デメリットへの反駁を厚くした分、メリットの再構築に関しては十分に返しきれず、とくに解決性の議論にはほとんど触れることができなかった。

 

 ということで準備時間に入ったが、その時の第二反駁担当者の顔を見て、「あ、大丈夫かな」と一瞬心配になった。デメリットについてこれだけ厚く反駁を返してきた第一反駁というのは修猷館戦でも体験していない。これだけの反駁を返すことができる存在と言ったら、他にはおそらく創価のT君ぐらいなものだろう。パニックに陥っていなければいいが…というのが僕の心境だった。

 しかし、反駁が始まってその心配はまたもや取り越し苦労だったことがわかった。

 デメリットの再構築から入りながら、しかも「長期的な視点」というボーティングイシューを提示しつつまとめていくではないか。オーストラリアの事例への再反論では「オーストラリアは気づいたんです。国が守るべき弱者にたいしてプレッシャーを与えるような政策をするべきではないということに。これは法があるかぎり永遠に続くデメリットなんです。」とじつに説得力あふれるスピーチを展開していった。

 そしてメリットで相手が落とした論点をキレイにまとめ、幸福な死という重要性は現状で可能であり、プランをとれば逆に精神的苦痛の中で死ぬというデメリットが起こることを示した。

 この反駁を聞いて「否定側第二反駁の方法をつかんだな」という手土妙を感じた。とにかく修猷館、下館第一という難敵と対戦することでぐんぐん成長していることが感じられた。

 いよいよ最後の肯定側第二反駁になった。

 このスピーチもさすがというものだった。まずデメリットの評価から入り、社会的圧力がどのくらいのものか、立証していないこと、法制化による圧力がどれくらい申告なのか証明していないこと、医者による圧力はプランで抑えることが可能なこと、深刻性の末期が辛くなることに関しては今つらくないと言っていないこと、不本意な死は発生しないことなどを返してきた。

 ただ、第一反駁からの一貫した反論ではなく、一か八か、ニューでも取ってもらえばもうけもの、という捨て身の作戦に出たという感じだった。

 そしてメリットに関しては、100%とれなければ意味がないこと、幸福な死に関してたとえ数はわずかでも、やるべき。人の幸せとは生きることが大切だといわれてきたが、本当にそうなのか?心から苦痛を取り除いてほしいと考える人にはその選択肢をあたえようではないか、脳死判定もケースは少ない、しかし法制化によって大きな改革になる。その大きな一歩が踏みだせる。例えわずかでも希望するものは安楽死を選択し、そうでないものは自分の希望する死に方を選択すればいいという、新たな一歩を踏み出すことができるというスピーチを展開した。

 関東の練習試合でも、彼女はこうしたスピーチを展開することが多かった。それに対しては、確かに感動的だが、だったら立論でそのことを述べるべき。第二反駁でいくら述べても、ジャッジは新しい議論としてとってくれないよ、と指導していた。

 しかし、結果として彼女の最後の捨て身のスピーチがジャッジを動かしたようだった。

 内因性をつぶし、解決性は証明責任を果たしていないメリットが残って、肯定側第二反駁で深刻性をわずかにつつかれたデメリットが、圧力は発生するがどのくらいの深刻性があるか不明ということで二名のジャッジが肯定側に投票した。

 いろいろ言いたいことはあるが、決勝戦で見たかったというのなら、五人ジャッジで結果を聞きたかったわいな。

 

 試合後、みんな泣いてたけど、僕自身もちょっとダメージが強くて、立ち直れなかった。負けたらリハーサルで試合をしてくれと言われていたので、了承したけど、もう、気が抜けちゃってたね。

 真剣勝負というのが、いかに生徒を成長させるものか、肌で感じただけに、あともう少し、試合をやらせてあげたかった。

 リハーサル後、花火に合流。その後、開成の諸君を誘って海辺へ行く。

 みんなで「バカヤロー!」と叫ぶ。嗚呼青春。

 しかし、こんなに悔しい思いをするのって、それだけ打ち込んできたからだよね。

 中途半端な思いなら、こんなに煮えくり返るような悔しさは感じない。

 本気で優勝を狙っていたし、その自信があった。だからこそ、それを達成できなかったことが悔しくて仕方がない。実際、三位決定戦を見ても、ファイナルを見ても、この子達だったらこう戦っただろう、という思いがぬぐいきれなかった。

 なんだかすっかり気落ちして、ホテルに帰ってうとうとしてたら、卒業生から呼ばれて、早稲田の立論を見てあげることになったのだが、頭痛が酷くて全然役に立たなかった。

 まあ、創価には強力な先輩がいるから、僕ぐらいが手を貸してもアンバランスにはならないだろうけどね。でも、全然だめだった。

 深刻性の議論など、本当はきちっと見てあげれば良かったのだけれど。

 それでも、ファイナリストらしくいい試合を展開したと思う。

 もちろん創価もね。

 それにしても、と思う。この半年、関東支部の事務局長として練習会の開催に奔走し、ジャッジが集まらないとに悩み、自分のチームは後回しにして、とにかく練習会の運営に支障をきたさないように腐心してきた。

 生徒達は最初の頃は本来の目的を忘れて、リサーチが楽しくなってしまった何て言っていた。その後、試合をしても試合をしても、勝てない時期が続いた。レギュラーを固めて、やっと流れが見えてきて、少しずつ議論ができ上がってきて、関東大会直前に突貫工事で仕上げて、死のリーグを勝ち抜き、駿台甲府に勝って、全国を決めた。そして31日の練習試合で三勝して自信をつかんで臨んだ全国大会だった。

 その間、僕は彼女たちに何をしてやれただろう。練習試合の相手さえしてやることができないほど、忙しかった。

 関東のレベルアップのために働き続けてきたけど、それは相対的に、自分のチームの地盤沈下を招いていたのではないのか。早稲田や下館一に反駁の仕方や議論のポイントを丁寧に教えてきたのは、実は愚かなことだったのではないのか。もっとエゴイストに徹して、自分のチームだけ、勝てるように囲い込んで練習をしてきたほうが良かったのではないのか。

 そんな悪魔のささやきが、頭の中をぐるぐる回っていた。

 でも、決勝のコメントで松本茂さんが言った一言で僕は救われた。

 「決勝に残った二校はその背後にある先輩達や地区の他の学校に感謝しなければいけない。」

 ああ、そうだ。そうだった。

 僕たちが悔しい思いをしている背後にも、関東を勝ち抜けず悔しい思いをしている仲間がいた。江戸取のみんなは来年を期して、今回はレポーターとして活躍してくれている。駿台甲府や、甲陵や、渋幕や、よきライバル達との戦いを経て僕たちはここにいる。

 そうした関東の仲間達との切磋琢磨の中で、生徒達は鍛えられ、成長してきたのではなかったか。そして全国大会の場で、経験を積むことで、さらに成長したのではなかったか。

 だとするならば、僕たちの進んできた道は間違ってはいない。僕の苦心してきたことも間違ってはいない。

 関東へ戻って、全国大会で得た経験を伝えていこう。秋季大会や後期論題大会や練習試合など、あらゆる機会を通じてお互いに切磋琢磨しあっていこう。僕が伝えられることのできるだけのものをみんなに伝えていこう。そうしてさらにいい試合、みんなが刮目するような試合を、関東でできるようにしていこう。

 来年また新たな伝説を生み出すために。

関東大会ベスト4!

それにしても、昨日の予選リーグはまさに「死のリーグ」だった。二試合を終えて四チームが1勝1敗で並び、最後の試合で勝ったところが決勝トーナメント進出。

で、開成とうちが勝ったのだけれど、ボート数、コミュニケーション点ともに並んで抽選でうちが暫定1位。

その結果、相手はかつて全国行きを阻止された駿台甲府と決まった。

初日が終わった後、7時過ぎまで駿台のフローを生徒達は検討し、今日の試合にはやる気まんまんで臨んだ。

昨日の三試合目に続く最高のできで、sさんの肯定側第2反駁が終わったところで勝利を確信した。

それでも議論が最後までかみあっていたこともあって、2−1での勝利。

でも、これでリベンジと同時に全国大会出場を掴むことができた。

隣の部屋では同じく死のリーグを勝ち抜いた開成が、やはり全国行きを決めていた。お互いに喜びあう。

準決勝は課題の否定側。

終わったと同時に、部員も僕もデメリットの欠点がよく見えた。

これは今後変えていかないといけない。

それでも1票とれたのはうれしかったな。

 

3位決定戦はまたまた開成と。

よくもまあ縁があるものだ。

試合は価値の部分を積極的に打ち出せなかったことが響いて2−1となったが、逆にその点をいかに改善するかでいろいろと手ごたえを感じることができた。

 

同じころ、5位決定戦で、早稲田が駿台甲府に勝利。

駿台甲府も早稲田も、よく練習試合をしてきた相手だけに、かなり複雑な心境ではある。

早稲田とは去年からのくされ?縁で、いろいろとアドバイスを送ってきたこともあり、まあよかった。

東京からは6校が出場して、4校が全国切符を手に入れた。

 

部員達も喜んでたけれど、駆けつけてくれた高3やOGたちも喜んでくれた。

wさんは、自分の経験と重ね合わせて泣いていたけれど、本当に我が事のように心配してくれていた。ありがとう。

 

さあ、明日はゆっくり休んで、また明後日から、全国へ向けて準備を進めよう。

 

3度のシルバーを、今年こそ返上して、その上を勝ち取りたいね。

極私的ディベート甲子園99

極私的ディベート甲子園97

極私的ディベート甲子園95−96

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筑田 周一
s_chikuda@hotmail.com
最終更新日: 01.8.17